油絵具の上から塗れる現代のテンペラ絵具


アキーラについてAbout aqyla

クサカベ アキーラ

アキーラとは株式会社クサカベから発売されている水性アルキド樹脂絵具です。
アルファベットでは「AQYLA」という表記になります。
その語源は「AQUA(アクア)」のAQ、「ALKYD(アルキド)」のY、「TEMPERA(テンペラ)」のRA、
3つの単語を掛け合わせて名付けられました。
2017年には全面的にリニューアル、一部色調の見直しもおこなわれ、パッケージデザインも一新されました。

下が旧デザインで上が新しいデザインのパッケージ
よりスタイリッシュに、カッコいい仕上がりに進化してます。

今号では化学に関する専門用語がいくつか登場するため、
本編に入る前に、今回の登場する用語をいくつか先に予習しておきたいと思います。

体質顔料
他の顔料・塗料の増量剤、また、着色性・強度などを改善するための混合剤として用いる白色顔料。
アルキド樹脂
塗料骨材のこと。付着性・耐久性・可撓性にすぐれ顔料の分散がよく、広く使用されている。無水フタル酸や無水マレイン酸等の酸とエチレングリコールやグリセリン等のアルコールを反応させて、水等を脱離させる縮合反応によって作られ、下記のアクリル樹脂とは成分が異なる。
アクリル樹脂
一般に、アクリル酸やメタアクリル酸の誘導体を主成分とする重合樹脂のことを指す。
エマルション
水と油のように、互いに混じり合うことがない液体同士が混ざり合っていることを指す。一方の液体の中で、もう一方の液体が微粒子状になって均一に分散し、浮遊している状態にある。例えば水と油だけを加えて振ると一時的に混じり合うが、この状態を「乳化」という。しかしそのまま置いておくと、また綺麗に分離してしまう。乳化した状態をずっと保つようにするため水と油を結びつける材料が必要。これを界面活性剤・乳化剤という。
例えば・・・
マヨネーズや牛乳は、水中に油分が 乳化している状態です。マーガリンやバターは逆で、油の中に水分が乳化している状態です。
油性塗料
溶剤(シンナー)で希釈した塗料のことを指す。
水性塗料
水で希釈する塗料のことを指す。

現代のテンペラ絵具
アキーラ4つの特徴

アキーラは、現代の「テンペラ絵具」として開発されました。とある大学の先生から、
現代の技術を使ってテンペラ絵具をつくれないかと打診されたことがきっかけで研究が始まり、
完成までにはおよそ10年ほどの歳月が掛かったそうです。
「テンペラ絵具を手軽に使いたい・・・」その想いの実現に向けて日々素材を研究するなかで、
条件が合致した原料、それが「水性アルキド樹脂」でした。

1ピュアな鮮やかさ
体質顔料をつかっていないので、顔料そのもののピュアな鮮やかさが表現できます。チューブから出してみると、油絵具やアクリル絵具と比べて、少しみずみずしい感触があります。そのため塗り広げやすく、発色もかなり鮮やかで強い印象があります。
2多様な素材に描ける
陶器・ガラス・プラスチック(一部を除く)・石膏地・金属など、いろいろな素材へ描くことができます。異素材への定着力は、アクリル絵具を上回ります。
堅牢な塗膜を得ることができ、仕上がりの耐久性も非常に高いものになります。
3快適な作業性能
水分が蒸発すると樹脂が顔料をコーティングし、表面が乾燥します。この段階で絵具に接触してもべたつきません。この状態から油絵具と同様に、ゆっくりと酸素を取り込んで全体が硬化するため、速乾性がありながら、急かされない快適な作業性能を発揮します。
4油絵具の上から描ける
アキーラ最大の特徴は、油性キャンバスや油絵具の上から塗ることができる水性絵具であることです。これまでの水性絵具のように剥離する心配がありません。その要因には「現代のテンペラ絵具を目指して作られた」ということ、それから「水性アルキド樹脂でできていること」が挙げられるのですが、その詳細については後ほど説明します。

油絵具の上から描ける水性絵具

先述に登場した「アルキド樹脂」とは、絵具や塗料の骨材となる原料のことを言います。
アキーラで使用している「水性アルキド樹脂」は油性のアルキド樹脂を使いやすくエマルション化し水性に加工したもの・・・
という話なのですが、なかなかイメージが難しいかと思います。
そこで、このセクションでは絵具の骨材となる原料の違いに触れ、その理解を深めてみたいと思います。

油性アルキド樹脂

油性のアルキド樹脂は、乾燥が早く塗膜も堅牢なため工業用塗料の原料として適しており、いわゆる「ペンキ」の原料というイメージです。自動車や外壁など様々な素材への着色に広く使われていますが、実は絵画用の絵具に使われる合成樹脂の中では、最も歴史が古いと言われています。樹脂自体の色が透明なので、顔料の発色が非常に良いのが特徴です。油性アルキド樹脂は植物油とよく混ざり合うので油彩画の制作においては、希釈して乾燥速度の調整や堅牢な塗膜を作るための画用液の原料としても用いられることがあります。

水性アルキド樹脂

アキーラで使用している「水性アルキド樹脂」は油性アルキド樹脂をエマルション化し、水性に加工したものです。つまり、アルキド樹脂としての、さまざまな素材に着色できる性質を有しており、この性質が絵画的に観ると「油絵具の上からでも描くことができる水性絵具」という性能を実現しているということになります。水性アルキド樹脂自体の特徴としては、樹脂自体の透明性が高く、鮮やかな発色が得られること、速乾性が高く塗膜が丈夫であることがあげられます。こうした特徴を持つ原料で似たものとしては、後述のアクリルエマルションという原料があリます。

引っ張り合うの力が横にも下にも均一。
そのため剥がれにくい。

アクリルエマルション

アクリルエマルションとはアクリル樹脂を水に乳化・分散させた原料です。水性アルキドと同様の特徴が多く見られますが、ズバリ最大の違いとしてはアクリルエマルションでは、油絵具の上に描くことはできません。また、アクリルエマルションと一口に言っても、メーカーによって実はその種類は数え切れないほどあると言われています。細かくみていくと使用されている樹脂やその他の原料の性質・配合が異なるため、大きな違いがないように見えても一括りにはできないそうです。

例えば、アクリル絵具を混色するとき、別々のメーカーのものを混ぜても、同じアクリル絵具であれば問題はないようと思いきや、メーカーの目線から見ると、それぞれの種類で使用されているアクリルエマルションや添加物が違うため、なんらかの不具合やメーカーが求めている本来の絵具の性能を最大限に発揮できないことがあり得るそうです。

アクリル同士が引っ張り合う(=横方向)の力が強いが、下には弱い。そのため素材によっては剥がれてしまう。

テンペラ絵具とは

絵具はそもそも顔料だけでは画面に定着しないため、糊が必要になります。油絵具なら乾性油、アクリル絵具ならアクリル樹脂、日本画絵具なら膠となりますが、テンペラ絵具はなんと卵で顔料を練った絵具です。そのためテンペラ絵具は艶がありません。このテンペラ絵具を表現するために作られたアキーラ。なのでアキーラにも艶はありません。

歴史としてはとても古く、ルネッサンス期の祭壇画(板絵)・イコン(宗教画)などにテンペラは用いられてきました。絵具の固着をよくするため、板の上から石膏地を作り描画する。
また、石膏地の上に金箔を施し瑪瑙でビカビカに磨いた黄金背景にテンペラを用いた例もあります。代表的な作品としてはシモーネ・マルティーニの受胎告知などが挙げられます。

テンペラの語源は、ラテン語の「テンペラーレ=かきまぜる」が派生したイタリア語です。なのでテンペラという単語自体は絵具の名称ではなく、かきまぜる行為を指すようです。

絵具全般、顔料と展色剤をかきまぜたもの、ということで〝テンペラーレ〟と呼んでいると言えます。なので、本来は「顔料と卵のテンペラ」と呼んだ方が正しいと考えられますが、便宜上ここではテンペラと呼びます。テンペラの主たる材料の「卵」。
実は卵黄の中に含まれるレシチンという成分が界面活性剤の役割を果たしていて、本来分離するはずの水と油をきれいに混ぜることができるのです。

例えば生活の身近なアイテムで、水と油と卵が安定して混ざっているエマルション状態のものをイメージすると、実はマヨネーズがそれです。他にも牛乳・木工用ボンドなども、エマルション状態にある物質です。水性面も油性面も両方に定着させる。これがテンペラ絵具の大きな特徴です。


クサカベ についてAbout KUSAKABE

株式会社クサカベは埼玉県朝霞市に本社工場があります。
朝霞台の駅からバスでおよそ10 分ほどのところで、バス停からはすぐそこの位置にあります。

倉庫は3年前にリニューアルしたそうで、モダンな外観の建物です。

取材時期が3月だったので、大量の新学期学校用品が準備されていました。

新館1Fには、佐藤紘子さんの作品が展示されていました。

紙は環境の変化に敏感なので、専用の部屋で気温・湿度管理をされています。

本社にはワークショップなどをおこなうスペースが併設されています。
こちらの部屋では、たくさんの顔料が展示されていて、実物の鉱石もいくつか紹介していただきました。

辰砂(バーミリオン)

辰砂という鉱石から得られる顔料。天然としては非常にめずらしく、ほとんど使われることがない。現在は人工的な硫化水銀を使う。

竜血樹(りゅうけつじゅ)

竜血樹というものを聞いたことがあるでしょうか。

まるで何かのロールプレイングゲームに
出てきそうな名前ですが、現実にあります。
イエメンのソコトラ島という場所に生息する木で、
英語で
「Dragon's Blood tree」。

この樹液がまさに血のように黒い赤茶の色をしており、まるで空想の動物「竜」の血液のようだと例えられたのです。または「キリン血(けつ)」とも呼ばれます。これも顔料として、主にバイオリンの塗装に使われます。木の姿自体も非常に独特であり、上部の枝や葉に目がいってしまいます。どうやらこの木は、根元からではなく葉から水分を吸収しているそうです。木の上には雲があるため、そこから水分を吸収するといわれています。

コバルトブルーライト

業界では高価な部類に入る絵具として定着しています。コバルト青とも呼ばれるこの顔料は、酸化アルミニウムと酸化コバルトを約1200度で3時間ほど焼成することで作られます。しかし高価なので、代替えの青系顔料と白系顔料などを配合して類似色を安価版として販売することもしばしば。コバルトブルー【ヒュー】など聞いたことがあると思います。ヒュー(Hue)とは色相という意味です。さらに以前は【チント】(まぜる)と呼ばれるものもありました。

ウルトラマリンブルー(合成群青)

合成で作られる無機顔料の一種です。天然のウルトラマリンはラピスラズリという鉱石から取れる顔料で、それを使った画家で最も有名なのはフェルメールでしょう。なのでフェルメールブルーとも呼ばれます。

しかし天然ものは非常に高価で、絵具として販売しても割が合いません。そこでラピスラズリの青成分だけを化学的に合成した顔料が用いられています。主に硫黄と炭酸ナトリウム、そして純粋な粘土(クレイ)などを混ぜて800度で3日間焼成すると、合成群青になります。

化学物質の合成と焼成で出来上がる顔料

顔料を製造するところはクサカベさんではなく、専門の顔料製造業者さんがいらっしゃいます。
絵具のためだけではなく、床や屋根の塗装に使われる顔料など、私たちが普段目にしている物や環境、
ありとあらゆる状況に顔料は使われていて、そのほとんどが化学技術を用いて作られています。
そのため絵具メーカーの技術部門には、化学の分野を専門とする方が多いのだそうです。

熱を吸収する遮熱顔料などもあるようです。焼成には主に電気炉を使用しています。
有機顔料の発達は産業革命以降で、車や印刷物など大量の物資を必要とする産業で使われてきました。
絵具が第一に開発された、というものではありません。
かつては当たり前に使われていた顔料でも、近年ではそこに含まれている原料が
人体や環境に有害であると判明したものについては、製造中止になった顔料が少なからずあります。
有名なものではエメラルドグリーンやコバルトバイオレットライトがありますが、
それらは顔料の発色をよくするために用いられていました。
多くの方々が安全安心に使ってもらえるという目的と、色の美しさを追求するという目的、双方が両立しないこともあります。


アキーラができるまでMaking of AQYLA

それでは、アキーラがどのように作られているか、工程を追ってみましょう。

製作の工程

攪拌 水と顔料

まずはこちらの機械・ミキサーに水と顔料などを混ぜ合わせます。

この時まだアルキド樹脂は入れずに攪拌していきます。

顔料を加え、最初は静かにミキサーを回転させます。

ロールミルで顔料を分散させる

以前の記事「ヴェルネ」にも登場しましたが、まずは顔料を分散させるための作業として、
ロールミルという機械に絵具を通していきます。

クサカベの工場には、主に三種類の素材で作られたロールがあります。「セラミックロール」「チルドロール(鉄)」「黒御影石」です。コバルトやカドミウムといった顔料は、実は鉄よりも硬く、3種類の中ではやわらかい方の鉄のロールにいれると、ロールをけずってしまい、黒ずむので、鉄よりも硬い御影石のロールを使用します。しかし、新しく黒御影石を作ってくれるメーカーが無く、替わりの素材として硬いセラミックのロールを使います。

  • セラミックロール

  • 黒御影石のロール

  • チルドロール(鉄)

ロールミルに通しすぎると顔料と混ざった水がとんでしまうため1回だけ通します。また水系の絵具の場合、鉄の素材は錆びる可能性があるため、基本的に黒御影石のロールを使用するとのことです。

水と顔料を混ぜた液をロールミルに流し込み、ロールを通って顔料が分散されていきます。分散とは、顔料の粒子をほぐす作業のことを言います。

再攪拌 水性アルキド樹脂をまぜる

分散した絵具をもう一度ミキサーに戻し、水性アルキド樹脂を混ぜていきます。最初の段階で樹脂を混ぜないのは、水性アルキド樹脂をロールミルにかけるとエマルションが壊れてしまうからです。

アルキド樹脂は油性ですが、あらかじめエマルション状態にしているものを使用します。あとは増粘剤など、絵具を構成するためのものを混ぜていきます。最初にミキサーの回転をあげてしまうと辺りに飛び散ってしまうので、状態に合わせて少しずつ回転を上げていきます。

アキーラはテンペラ絵具を忠実に再現するために全色つや消しで統一されています。この工程では、そのディテールを作り出すための、つや消し剤を入れていきます。実は、水系の絵具の方が、油系の絵具に比べてデリケートで手間がかかるのだそうです。

この動画からもわかるように、縁やシャフト部分に付いてしまったものもきちんと取り、できる限り無駄が出ないよう、丁寧な加工を繰り返していきます。

脱泡 空気を抜く

攪拌された絵具の中には空気がはいっています。そのままにしてしまうと品質の維持ができないので、真空脱泡がおこなえるミキサーを使って、内部の空気を抜きながら攪拌していきます。

こちらのミキサーでは機械内部の気圧を下げ、真空状態にすることができます。絵具の中の空気を抜き、脱泡するのです。−1気圧で真空状態になり内部の空気を外に抜いていきます。

機械の中を覗いてみると、次から次へとボコボコと泡が出ていきます。絵具の中の空気が抜けていっているのです。ちなみに真空状態になると水蒸気が発生するそうで、内部はどんどん雲って見えなくなっていきました。

色をデータで確認する

出来上がった絵具が商品としてきちんと出せる品質に仕上がっているかどうかジャッジするために、色を機械に通して数値化し、基準の色との色調差を調べます。この確認作業は複数回おこない品質を管理しています。

基準色は決められたロットがあり
各絵具から出します。

製造した絵具と基準の絵具を
パレットにならべ、ナイフで伸ばします。

また、絵具の粘度も機械で測定します。
(粘性検査)

色を目で判断する

色をデータに置き換え数値化して調べる工程は一番大切なことですが、クサカベさんは各製造工程ごとに、誰が作業していても自分たちの目できちんと色を確認・色がちゃんとあっているか、作ろうとしている色との色調差は無いかどうかを都度判断しています。これを怠るとほんの少しの狂いが後々大きな差につながり、一体どの段階で差が出たのかわからなくなるからです。最終的に品質管理で判断します。色を測る上での明確なルールというのはないため、各メーカーがそれぞれの整合性をとらないといけないのです。

こちらの写真のようなサンプルが攪拌ミキサーの機械そばに置いてありました。作業途中の色を確認するためのパレットのようです。

ちなみに、人間の色の捉え方も不思議なもので、無彩色の色調についてはかなり厳しい精度で認識することができ、逆に彩度の高い黄色を捉えるのが苦手なのだそうです。そういった意味でも、色の数値化も大事な工程です。そして瞳の色で、色調の捉え方が違うということはないのだとか。

ラベルを貼る

アキーラは昨年、チューブのデザインを刷新し、銀チューブを共通のベースにした統一感あるイメージに刷新されました。私としてはとてもカッコよくなって良かったと思っていますが、以前のデザインのチューブは、チューブ全体に印刷がされているもので、実はその方がコストは安いのだとか。

しかし印刷で作るとなると、ロット数が5,000〜10,000本と膨大なため、一回の発注にたくさんの本数を抱えなければなりません。共通したチューブのほうが、在庫管理がしやすいとのことです。こちらの動画がラベルを貼る機械。1本1本、丁寧に機械に通していきます。

チューブに充填する

出来上がった絵具をチューブに充填していきます。
充填は全てデジタル管理。機械が動いてる間も、作業される方がきちんとチェックをし続けます。

洗浄・廃液処理

充填し終わった機械は、水洗いをします。その際、絵具の廃液については、そのまま捨てるのは環境によくないため、
きちんと濾過され、絵具のかすについてもきちんと分けて産業廃棄物として処理します。


メディウムMedium

アキーラの金・銀・銅

絵具において、金属色がどうやって作られているか、疑問に思われる方もいるかもしれません。アキーラではパールゴールド・パールシルバー・パールブロンズがそれにあたります。この三つを構成する顔料表示を見てみると、どれもPW20と書かれていますが、これはマイカ(雲母)のことです。金ならば雲母に黄色が、銀ならば雲母に白色が、銅ならば雲母に赤色が薄くコーティングされているため、いかにも金属らしく輝いて見えるということです。

アキーラのメディウム

メディウムとは絵具に様々な効果をもたらすものです。
アキーラシリーズでは、今年の春からメディウムのラインナップをリニューアルしました。
商品のデザインは今までガラス瓶だったのが、チューブと樹脂製ボトルになり、絵具に混ぜるときに量を調整し
やすくなりました。また、仕様も見なおし、より性能が分かりやすくなりました。

通常のアキーラ

アキーラは全色つや消しです。絵具を作る際につや消し剤を入れるので、マットな仕上がりになります。ポスターカラーやアクリルのガッシュ絵具と比べても、色の深さと顔料の発色は良いです。おおよそ10分しないくらいで乾燥し、指に接触してもくっついてきません。ただしその時点では、指でこすったりすると跡が残った感じになります。完全に乾燥すると、表面を触っても跡が残りません。

アルキドメディウムグロス

いわばアキーラに使われるアルキド樹脂そのものです。絵具に混ぜてつやを出したいときに使用します。ただし加えすぎると、最初の乾燥時では表面にかなりべたべたが残ってしまいます。あえてアキーラにつやを出す理由としては、油絵具と併用して描きたい場合に、つやのある油絵に調子を合わせるためです。

アルキドメディウムマット

アルキドメディウム自体つやがあるので、ここにつや消し剤を入れたものがマットになります。乾いた表面を触った感じ、同じマットな質感なので、通常のアキーラとそこまで変わりません。メディウムをまぜたためか、普通にアキーラを塗った方が色が深い印象があります。アルキドメディウムは、いずれも単独で塗ると乾燥が遅いうえ、黄ばみが目立つ為そのまま使用するのはおすすめしません。

ラピッドメディウム

速乾剤。その名の通り絵具とまぜることにより、乾燥を早めることができます。普通のアキーラよりも乾燥が早くなり、およそ3~5分ほどで接触乾燥は大丈夫でした。最初の乾燥時、指でこすっても、跡が残りくいのも特徴です。

モデリングペースト

ご存知、下地を盛り上げるためのメディウムです。絵具と一緒に混ぜて使うと、画面上に残った絵具のタッチがそのまま表現されます。

レベリングリキッド

ガラスや油性面などのはじきやすい表面に描く際、絵具に1〜2滴混ぜて使うと、はじかずに画面にタッチが残ります。筆運びが良くなり、描く素材になじみやすくなります。表面が平滑な紙にも、はじきにくく塗りやすくなります。オックスゴールのようなものと思っていただければいいです。

クリアトップコート

絵具と混ぜずに、上から原液で塗ります。アキーラの他、油彩面にも塗れます。いわばニスのようなものです。下の色を黄変させない・色の影響を及ぼさない素材を探して、開発されました。こちらの商品の仕様はアクリルエマルションではなく、ポリエステルエマルションです。1〜2回ほど塗るとコーティングがしっかりされ、指で触ってもひっかかりません。ただし耐水性ではないため、水には強くありません。
※それでも膠よりは耐水があるとのこと。


あとがきAfterwords

前回は油絵具を特集しましたが、今回は水性絵具の登場となりました。
株式会社クサカベさんにはお忙しい中、実際の製造工程を見学させて頂きました。
ここにあらためて御礼申し上げます。
クサカベさんは今回の取材のように、一般の方に工場見学を定期的に行っているとのことで、
スタッフ皆さんの仕事への姿勢、各工程ごとの丁寧な説明や、機械の名称などのガイドが工場内に貼ってある様子を見て、
ご自身の技術を広く知らしめ、絵具の性能をアピールするという姿勢を強く感じました。

絵具の色を基準づけるのに、共通のルールはありません。
だからこそ、各メーカーごとの厳しい判断や妥協のない姿勢が求められるのだと感じました。
この点が、メーカーごとに違うのです。
卵テンペラという古来の技法を現代の目線で研究し直し、最新の技術で開発されたアキーラ。
万能さはもちろんのこと、発色の良さも申し分ありません。
リニューアルしてより親しみやすくなったアキーラ、是非お使いください。


ご購入についてAbout Purchase


教育機関への支援Social Activities

クサカベでは、カンボジアのシェムリアップで2008年に開校した
子供達を対象とした美術教室「小さな美術スクール」を支援しています。
画材提供のほか、生徒さんの作品展示販売などもおこなっており、
作品の売り上げ金はスクールの運営費・作家である子供達に還元されています。

かつてカンボジアでは内戦の影響で、教育者などの知識層の方々が虐殺されたという歴史があり、
子供達が学びの機会を十分に得られないという現状がおきています。
そこで、日本人の笠原知子さんがスクールを立ち上げ、
ものづくりの楽しさを十分に体験してもらうため、また作品が売れることで自信をつけてもらうため、
現地で活動されておられます。